以前紹介した「炎は流れる」を読み終えた。
結局、大宅壮一全集24~27巻の4冊が対象となっていた。ざっくり書くとこんな感じ。
1(24)巻:乃木将軍の殉死、赤穂浪士のはなし
2(25)巻:高杉晋作の見た清国、欧米文化との接触、遣米使のはなし
4(27)巻:勤皇博徒日柳燕石、遣欧使のはなし
「忠誠心の源流を探る」ということで始まった本シリーズ。冒頭に大宅氏が宣言した通り話があっちへ行ったりこっちへ来たり振れながらも歴史をさかのぼっていた。
それがプツンと途中で終わってしまった。(福沢諭吉が英国へ遣欧使節団で行ったところ)
あとがきを読むと、どうも大宅氏が体調を崩してしまったようだ。
確かに、膨大な量のはなしが出てくるので身体がついて行かなかったのでは無いかと思える。
もっともっと伝えたいことがあったんだろうな~。
大宅さんありがとうございました。
■気になって書き出した箇所をあげておく
・二百五十年もつづいた制度の変革が、こういうふうになしくずし的に行われ、最小限の犠牲ですんだということは、外国の歴史には例のないことである。(中略)日本が古くから単一民族で構成されていて近代的民族主義へ脱皮する素地が早くから準備されていたからであろう。(2巻168頁)
・日本における忠誠心の形成に影響を及ぼしたのは宋学である。(3巻143頁)
・日本は国をあげて”日韓併合”の線にそってすすんできたわけではない。(中略)もともと韓国の独立を主張していたのは日本であった。むろんこれは清国やロシアに韓国が吸収されるのを防止するのが目的で日本の実力が不足していたからであるが日本が実力を付けてからは、独立、保護国、併合となった。(3巻205頁)
・日本人がロシア人に勝つことができたのは、主として秘密政略を巧みにおこなったからである。(3巻240頁)
・日本人の最大の欠点は、急激な事態の変化に直面したとき希望的観測、悲観的観測ともに強く出すぎる。現実を見て冷静な判断を下せない。(3巻あとがき)
・長州人特有の”政治性”と呼ばれるていのものだ。この性格が日本の軍部、とくに陸軍部内に長州系軍人を通じて深く浸透し、日本陸軍の重要な特性を形成していたともいえる。(4巻197頁)
・日本の民族主義、日本の愛国心というものは、伝統的にアメリカの「モンロー主義」のような孤立主義は認められない。いつでも半島や大陸とのつながりにおいて出てくるのが重要な特色となっている。(4巻268頁)
・「東洋的な虚無思想」実は日本人特有のもの。(中略)これは湿度が高く、四季の変化に富み、自然災害の多い日本の風土とつながっている。(4巻274頁)
・シナやインドのほうが、日本よりもはるかに西洋に近い。それでいて日本が、シナやインドよりも早く西欧式近代化に成功したというのはそれだけの理由がなければならない。(中略)古くから日本のなかに西洋式近代化に近いものがどこかにあって、しかもそれが胎児のような形で育っていたのだと見られないこともない。(4巻354頁)
結局、日本人特有の性質は、自然災害が多い島国の単一民族が根っこにあるものと思われる。今は開国して間もない日本が大陸に進行していったところをもっと知りたい。ロシアが怖かったのもあると思うが、鎖国からの変わり身の早さのところをもっと知りたいところだ。