ヒロニューのブログ

人生を充実させたいアラフィフ独身おじさんのつぶやきです。

巨人の見ていた世界を垣間見る(立花隆の最終講義)

 

今年4月に亡くなった立花隆さんが10年前東大で行った講義をまとめたもの。内容が濃いので2回読んだ。
なぜ今になって書籍化されたのか分からないけれど、講義を受講した東大生が立花さんの添削を受けながらまとめたものだそうだ。東大生と言えどもこれだけの内容を1回の講義(6時間!)で受けた後まとめるのはさぞ苦労しただろうな~と思った。立花さんが講義の序盤に語っているが70歳になったこの頃から自分の寿命を意識していたようで「死ぬ前に若者に一つでも多くのことを伝えたい」という思いで様々なことを語っている。そういう感じがする。

 


内容は人体の話から始まり、社会のダークサイト、マラルメ全集、脳内コペルニクス的転回の重要性、死、問題をどう解いていくか、言語世界と現実世界のズレ、ヴィトケンシュタインの論理哲学論考、複雑性意識化の法則、デカルト方法序説不確定性原理・・・多岐にわたる。立花さんがよく「知の巨人」と言われていたのが良くわかる。自分では理数系と言っているけれど、この人理数系、文系どっちも詳しいんだよな~。世界がどう見えていたんだろう。

今回この本を読んで強く感じたのは現代の文明社会はヨーロッパ人の考え出した数学や哲学の上に成り立っているということ。最近は欧米の力が弱まり、中国が力を持ってきているとか言われるけれど、そもそも人類発展の原点はヨーロッパ人の思考なんだよな。そう改めて感じた。なぜなんだろう。キリスト教に素地が有るのか?
また、数学と哲学は別物と考えていたけれど、歴史的に見て数学が哲学に影響を与えているということを初めて知った。数学も考え方のひとつということか。

特に面白かったのは19世紀以前のデカルト的推論は20世紀になってアインシュタイン等によって誤りが証明され、21世紀の現代は「そのものがそこに存在しているかどうかは確率をもってしか語れない」(不確定性原理)というところに来ているはなし。原子核の周りを回る電子はどこにあるのか?光は波なのか粒子なのか?どうやら我々はこうだ!と言い切れないあやふやな世界に生きているらしい。今後発表されるであろう素粒子の研究結果は人類の哲学にも影響を与えるんだって。

正直、この本に書かれていることについて理解できるのは表層でしかないけれども、立花さんの本を読むと高卒の自分でも少し賢くなれた気がする。

この世にある本の相当部分は頭の悪い人が書いた頭の悪い文章の羅列で読む価値がない本です。(P105より)

だって。

きっつ~。

自分はどれくらい読む価値のない本を読んでいるのかな?少々難しそうだが講義で紹介されていた本を読んでみたい。

立花さんありがとうございました。